沖縄合宿報告書 2023 Aug

合宿概要

概要

 日本熱帯医学会学生部会では学生が熱帯医学への興味を維持できるよう、定期的に勉強会やイベントなどを企画して活動している。一方で、オンラインでの活動を基本としているため、学生自身が熱帯医学の診断や研究領域を自分の体を使って経験する機会はほとんどない。そこで、日本で唯一亜熱帯地域に属し、日本の他の地域とは異なる感染症の分布や流行パターン、歴史、文化を持つと言われる沖縄で合宿を行うことで、熱帯医学を志す意志を具現化するための契機になることを期待する。

目的

熱帯医学に興味のある学生が、亜熱帯地域である沖縄におけるフィールドワークや特有の歴史・文化を経験し、専門家や現地の方々を交えて互いに意見交換ができる活動を企画する。

活動内容

参加学生(大学)

北海道大学、旭川医科大学、東京大学、東京医科大学、横浜市立大学、信州大学、長崎大学、熊本大学 

8月21日(月)午後J-Trops、琉球大学熱帯医学研究会との交流会(22人)参加者(J-Trops会員、琉球大学熱帯医学研究会部員、山城哲先生、狩野繁之先生、小林潤先生)
8月22日(火)琉球大学研究室訪問・講演
午前:琉球大学熱帯生物圏研究センター感染生物学部門分子感染防御学分野   高江洲義一先生「結核菌病原因子の作用機序の解明から新規治療薬の開発へ」
午後:琉球大学大学院医学研究科細菌学講座   山城哲先生「沖縄のコレラ、世界のコレラ」
8月23日(水)OIST(沖縄科学技術大学院大学)研究室訪問・講演
Molecular Cryo-Electron Microscopy Unit Professor Matthias Wolf“A tour on the cryo-EM facility in OIST”
8月24日(木)合宿の総括・振り返り 解散(希望者は石垣島へ)
8月25日(金)戦争マラリア記念施設である八重山平和祈念館を訪問。(希望者のみ)

訪問時の活動についての報告

8月22日 

◯琉球大学熱帯生物圏研究センター 感染生物学部門  分子感染防御学分野 

高江洲義一先生  講義:「結核菌病原因子の作用機序の解明から新規治療薬の開発へ」

 高江洲先生の研究室訪問では、高江洲先生の結核の結核の研究に関する講義と研究施設の紹介をしていただきました。結核菌の排除に関わる炎症性サイトカインを阻害する病原因子であるZmp1に関するお話など非常に高度な内容となり、結核の病態に関する学びを深めることができました。さらに、同研究室の松崎吾朗先生からも、医学部卒業後の研究者としてのキャリアに関するお話をいただき、研究者としてのキャリアに関する学びも深めることができました。そして、高江洲先生、松崎先生とパキスタンからの留学生とともに昼食を取り、パキスタンについてや留学生の生活などの話をすることができ、国際交流の機会を設けることもできました。

◯琉球大学大学院医学研究科細菌学講座

山城哲先生  講義:「沖縄のコレラ、世界のコレラ」

 山城先生の研究室訪問では、山城先生のコレラに関する研究について講義をしていただきました。コレラに関する基礎的な説明から、那覇市近郊で行われたコレラ菌の調査などについてのお話をしていただきました。那覇市近郊の安謝川におけるコレラ菌の同定に関する研究では当初の調査の時では毒性がないと判定されたが、新しい手法による調査によって毒性があることが示唆されており、新しい手法を用いることで、新たな発見がなされるという医学研究に関する大きな学びとなりました。さらに、学生時代から熱帯医学に興味を持っていた山城先生の学生時代の取り組みなどの話や現在の研究室に至るまでのキャリアに関するお話を聞くことができ、熱帯医学に取り組んでいくキャリアパスに関しても学ぶことができました。

8月23日

OIST(沖縄科学技術大学院大学) Molecular Cryo-Electron Microscopy Unit

Professor Matthias Wolf  “A tour on the cryo-EM facility in OIST”

 OISTの訪問の際には、最初にOISTに関して設立から現在に至るまでについてやどういった研究者がいるかなどをお話をしていただいた後にOISTの見学ツアーを行っていただきました。ツアーでは世界でもトップクラスの研究機関であるOISTの巨大な研究施設に圧倒されるとともに、整った制度や支援、最新の研究機材などの充実した研究環境を知ることができ、特に研究に興味を持っている学生には大きな刺激となりました。そして、電子顕微鏡を用いた研究を行っているProfessor Matthias Wolfに研究の説明と研究室の見学を行っていただきました。普段は直接見ることのできない電子顕微鏡を実際にみせていただく貴重な機会をいただき、その精巧さを実感するとともに電子顕微鏡に関する学びを深めることができま、さらに、ウイルスの構造をVRを用いて見る体験などもさせていただき、非常に興味深くまた研究意欲を大きく刺激させられるものとなりました。

謝辞

 今回の夏合宿は、訪問先の先生方とzoomなどで打ち合わせ等をさせていただき、事前学習を進めてまいりました。沖縄で熱帯医学や感染症に関する研究を行っている先生方の講義を受け、研究室を訪問させていただいて、学生一同大きな学びとなりました。熱帯医学を志す意志を具現化するための契機となるものであり、これからの大学での学びや将来のキャリアについて考えていく大きな機会となりました。また、J-Trops会員は全国各地から参加しており、顔を合わせる機会が無かったのですが、本合宿を通じて昼夜にわたって話をする機会ができて、お互いの理解を深める意味で大変有意義だったと感謝しております。夏合宿の実施に関しまして、熱帯医学会の先生方からは物心両面多くのご支援をいただきました。夏合宿参加者を代表して御礼申し上げます。ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

文責 熊本大学医学部医学科3年 大城健斗 北海道大学医学部医学科3年 髙木祐治

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