チームメンバー
勉強会運営責任者:安中悠眞(産業医科大学医学部5年)
髙木祐治(北海道大学医学部4年)、柳瀬健斗(関西医科大学医学部5年)、廣幡絢子(岡山大学医学部5年)
勉強会概要
2026年第1タームでは、「臨床推論」をテーマに取り上げた。臨床推論は、患者の症状や所見から疾患を推定し、診断へと至るための重要なプロセスである。本タームではまず、学生勉強会においてマラリア・デング熱・住血吸虫の3疾患について基礎知識の整理を行った。その後、山元佳先生をお招きし、これら3疾患のうち1疾患を題材に臨床推論形式のご講演をいただいた。
勉強会の到達目標
本勉強会では、臨床推論の基本的な流れ(情報収集、鑑別診断の列挙、追加情報の取得、診断の絞り込み)を理解することに加え、疾患を単に暗記するのではなく、病態や疫学、感染経路、検査所見を関連付けて理解し、「考え方」として整理できるようになることを目標とした。また、発熱などの非特異的な症状を呈する症例において、渡航歴や曝露歴といった情報の重要性を理解し、鑑別診断に活かす視点を身につけること、さらに熱帯地域における寄生虫・感染症の実態について症例を通じて具体的にイメージできるようになることを目指した。加えて、グループディスカッションを通じて自ら仮説を立て、他者と議論しながら思考を深める力を養うことも到達目標とした。
講演者
国立国際医療研究センター国際感染症センター
山元佳先生
勉強会日程・スケジュール一覧
・3/20 20:00~21:00学生勉強会①
・3/24 20:00~21:00学生勉強会②
・4/2 20:00~21:00学生勉強会③
・4/14 20:00-21:00山元佳先生講演会
20:00~20:07 開会・趣旨説明・先生の紹介
~20:15 先生から症例の初期情報を提示
~20:30 チームに分かれて討論
~20:35 チームの議論をまとめ全体共有
~20:50 実際の症例提示+臨床推論の解説
~20:55 会員へのアドバイス
~21:00 質疑応答・閉会
勉強会報告
〇学生勉強会①、②、③
2026年3月20日、24日、4月2日に行われた学生勉強会では、2026年4月14日に実施された山元先生による臨床推論講演に先立ち、マラリア、デング熱、住血吸虫症の3疾患について基礎知識の整理を行った。学生勉強会は3回とも同内容での実施とした。
勉強会では、各疾患の病原体の特徴、疫学、感染経路、臨床症状、経過、診断方法について体系的に学習した。まず、マラリアについては、ハマダラカを介した感染経路や赤血球内寄生による病態、間欠熱をはじめとする臨床症状、ならびにギムザ染色による顕微鏡検査を中心とした診断法について確認した。また、マラリア流行地域への渡航歴の聴取が診断の出発点となることが重要である点についても整理した。次に、デング熱については、フラビウイルス科デングウイルスによる感染症であること、ネッタイシマカ・ヒトスジシマカを媒介とすること、ならびに発熱、頭痛、筋肉痛、皮疹などの非特異的な全身症状を呈する点を中心に学習した。さらに、再感染時に重症化リスクが高まる抗体依存性感染増強(ADE)や、迅速診断キット(NS1抗原・IgM)による診断、対症療法を中心とした治療方針、予防法についても理解を深めた。最後に、住血吸虫症については、淡水中のセルカリアによる経皮感染という特徴的な感染経路、寄生部位の違いによる臨床像の差異、急性期における発熱や下痢、好酸球増加、慢性期における肝線維化や門脈圧亢進などの病態について学習した。また、虫卵検出を中心とした診断方法や、渡航歴・曝露歴(淡水接触)の重要性についても整理した。また、「Kahoot!」というゲーム形式のクイズ学習アプリを使い、各疾患についてクイズ形式で知識確認を行った。
これらの学習を通じて、発熱などの非特異的な症状を呈する患者に対して、渡航歴や曝露歴を踏まえた鑑別診断を構築するための基礎知識を習得し、臨床推論に必要な思考の土台を形成することを目的とした。
〇山元先生講演会
本勉強会では、学生勉強会で事前に知識の確認を行っていた3疾患(マラリア、デング熱、住血吸虫症)のうち、マラリアを題材として、山元先生より臨床推論形式でご講演をいただいた。
講演では、32歳男性、発熱および頭痛を主訴とする症例が提示され、参加者は初期情報をもとに4つのグループに分かれ、各グループのファシリテーターのもとで鑑別疾患、追加で聴取すべき情報、必要な検査について討論を行った。症例は、39℃台の発熱と頭痛を主症状とし、呼吸器症状や消化器症状を伴わない非特異的な発熱症例であったが、重要な情報としてガーナからの帰国歴が含まれていた。このような背景から、参加者は学生勉強会で扱った熱帯感染症だけでなく、ウイルス感染症、細菌感染症、急性肝炎などの一般的な疾患に加え、幅広い鑑別を検討した。その後提示された検査所見では、血小板減少、肝酵素上昇、黄疸などが認められ、これらの情報をもとにプロブレムリストを作成し、鑑別診断をさらに絞り込んでいく過程が示された。特に、発熱・血小板減少・渡航歴という組み合わせからマラリアを疑う思考プロセスが重要であることが強調された。
講演では、臨床推論において「スナップ診断が可能か」、「検査が必要か」、「どの検査が次に必要か」といった思考の枠組みが提示され、非特異的な症状に対しても体系的に診断へと至るプロセスが解説された。また、輸入感染症診療において、渡航歴は患者が自発的に申告するものではなく、医療者側から積極的に聴取すべき重要な情報であることが強調された。
本講演を通じて、非特異的な症状を呈する患者に対しても、渡航歴や検査所見を手がかりに鑑別診断を広げ、適切に絞り込んでいく臨床推論の重要性を実践的に学ぶ機会となった。
統括
本タームでは、臨床推論の思考プロセスに焦点を当て、マラリア・デング熱・住血吸虫の知識確認を行う機会を得た。また、山元先生から臨床推論形式の講演をいただき、実際の臨床現場での応用可能な「考え方」としての臨床推論の重要性を実感した。さらに、今後の学習や臨床実習に活かすべき基礎的な思考力を養う有意義な機会となった。
謝辞
報告書の締めくくりにあたり、お忙しい中善意でのご協力を賜りました山元佳先生、また平素より学生団体の活動に際し、たくさんのご支援と応援をいただいております、日本熱帯医学会理事長 山城哲先生に、心から御礼申し上げます。
4月28日作成
文責 産業医科大学医学部5年 安中悠眞