2026夏合宿報告

概要

 J-Tropsでは3年前より、夏季休暇を利用した合宿を企画している。合宿は、メインの活動であるオンライン勉強会を補完する実地研修としての役割や、学生同士の対面ならではの深い議論や交流を目的としている。本年度は「将来グローバルヘルスや国際協力に携わることを志す会員が、JIHSでの講義、ワークショップ、交流を通して、感染症課題・対策から保健システムの仕組みや国際医療協力について理解を深め、グローバルヘルスを自分ごととして考える契機とすること」を目的とし、国立健康危機管理研究機構の国際医療協力局、国立感染症研究所、国立国際医療研究所 熱帯医学・マラリア研究部を訪問した。

 本合宿では、感染症や国際保健の様々な分野にて第一線でご活躍なさる先生方から貴重なご講演・ワークショップの機会をいただくことができた。全国から16名の学生が参加し、プログラムや学生間の議論を通じて、今後の学習における指針を得ることができた。

活動報告

7月27日(月) / 8月1日(土)

事前ワークショップ

目的「合宿初日のPCMワークショップの概要・進め方を共有し、タイ肝吸虫について事前学習を行うこと」

8月3日(月)

国立健康危機管理研究機構(JIHS) 国際医療協力局

保健システム強化、問題解決とPCM手法についてご講演

「架空の国X国におけるタイ肝吸虫症~食文化に配慮した感染症対策と保健システムの構築まで~」との題でPCMワークショップ

人材開発部 研修課長 野田 信一郎先生

人材開発部 研修課 河内 宣之先生

人材開発部 研修課 荒木 嘉子先生

 JIHS国際医療協力局を訪問し、野田信一郎先生より、保健システムの重要性と問題解決におけるPCM手法について講義を受けた。保健システムは、すべての人に公正・公平な医療を提供するための基盤であり、将来の健康危機にも対応できる強靭なシステムの構築が求められていることを学んだ。また、PCM手法では、問題把握から解決策の検討、計画、実施・評価までを一連のサイクルとして捉え、問題の全体像を把握することが重要であると学んだ。その後のグループワークでは、「タイ肝吸虫症の感染率が高い」という問題を題材に、個人の知識や行動、食習慣、衛生環境、医療・保健サービス、社会的背景など、感染につながる要因を細分化して整理した。表面的な問題だけでなく、その背景にある要因を多面的かつ漏れなく捉えることで、より効果的な解決策や計画につながることを実感した。

蜂矢 正彦先生、野田 信一郎先生、狩野 繁之先生、砂川 富正先生、萩原 悠先生、山﨑 里紗先生にご参加いただき、懇親会開催

8月4日(火)

JIHS 国立感染症研究所訪問・施設見学

応用疫学研究センター長 砂川 富正先生

 Morning Meeting(MM)の見学や感染研内のEOCの施設見学を通して、現在国内外で注目されている感染症や、それらに対して実際にどのような情報共有・対応方針の検討が行われているのかを、現場の雰囲気とともに学ぶことができた。また、砂川先生のご講演では、実際の感染症アウトブレイク発生時における疫学調査や対策の進め方について、香港でのSARS対応をはじめとする実例を交えながらご説明いただき、感染症危機管理の最前線で求められる実地疫学の役割や意思決定のプロセスについて理解を深めることができた。普段の大学講義では触れる機会の少ない感染症対策の実際を学ぶことができ、感染症危機管理に携わる現場を身近に感じられる大変貴重な機会となった。

JIHS 国立国際医療研究所 熱帯医学・マラリア研究部訪問・ご講演

部長 狩野 繁之先生

 ご講演に先立ち、国立国際医療センターの概要や歴史についてご説明いただいたほか、長崎大学JIHSサテライトについてご紹介いただいた。ご講演では、世界におけるマラリアの感染状況や死亡率、さらにマラリア排除(elimination)を達成した国々の推移について、時系列に沿ってご解説いただいた。さらに、先生がフィリピンで取り組まれているマラリア撲滅研究について、これまでの活動や現地での取り組みをご紹介いただき、国際共同研究の実際について理解を深めることができた。加えて、現在パラワン島で流行しているサルマラリア原虫について、森林減少によるecotoneの形成がサルと人との接触機会を増加させていること、その対策にはOne Healthの視点が不可欠であることをご説明いただき、環境変化と感染症との関わりについて学ぶことができた。研究室訪問では、マラリア感染患者のギムザ染色スメアを実際に顕微鏡で観察し、parasitemiaを測定する体験をさせていただいた。講義で学んだ内容を実際の検体を通して確認することができ、マラリア診断への理解をより深める貴重な機会となった。

謝辞

本夏合宿の開催にあたり、当団体初となる合宿での対面ワークショップの実施にJIHS 国際医療協力局 野田 信一郎先生より多大なご協力をいただきました。ご訪問先のすべての先生方に丁寧なご指導を賜り、参加者一同にとって大変貴重な学びの機会となりました。平素よりJ-Trops の活動をご指導くださる顧問・山城哲先生には、準備段階から終始ご助力をいただきました。さらに、本合宿に対し、熱帯医学会会員の皆様からご支援金・ご寄付を賜りました。ここに関係各位のご厚情とご高配に、合宿参加者一同、心より厚く御礼申し上げます。

文責:安中悠眞(産業医科大学医学部医学科5年)

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